炎症性腸疾患,特に潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)の長期経過例に癌・dysplasiaの発生頻度が高く,累積発癌率が10年で1.6%,20年で8.3%,30年で18.4%とメタアナリシスで報告されている1).これら炎症性腸疾患に合併する癌をcolitic cancerという.用語としてはcolitis-associated colorectal cancer(UCの場合はUC-associated colorectal cancerもしくはcolorectal cancer associated with UCなど)が適切と思われるが,慢性炎症に伴う発癌というニュアンスがよく伝わるため,特に本邦ではcolitic cancerの呼称が好んで用いられている.欧米においても論文タイトルには使用されることがある.
通常のadenoma-carcinoma sequenceと呼ばれる腺腫を介した発癌過程に対し,炎症によって遺伝子の変異・異常が蓄積し,dysplasiaと呼ばれる粘膜内腫瘍を介して大腸癌に至るinflammation-dysplasia-carcinoma sequenceという考え方が提唱されている2).若年発症し多発する傾向がある.
炎症により荒廃した粘膜に発生するため境界不明瞭で,かつ平坦な病変が多いため発見が難しく,比較的早期から深部浸潤する傾向があるため(Fig. 1),予後も不良と考えられてきたが,近年では早期癌・dysplasiaの段階で発見される病変や平坦病変の発見数が増加している(Fig. 2, 3)3)4).